HITAC-10II CPU board

non object

以前、日立の有名なミニコンピュータHITAC-10IIを捨てるから拾っていかないかと言われたことがあったのですが、さすがに置き場所やらに困りまして、3枚の基板のみ持ってきました。それをお見せします。HITAC-10IIってなんだって人も多いでしょうが、1970年代初め頃にわずか1000万円くらいで簡易な入出力装置まで含めて一式揃えることができた安価な16 bit小型コンピュータです。なに、入出力装置を含まないCPU本体だけなら、一人ではつらくても二人いれば手に持って移動できるでしょう。そんな機械です。基本的にTTL ICを組み合わせて作られたコンピュータです。

以下の2枚がCPUを構成する基板です。残りの1枚はコアメモリを用いたメモリ基板です。この2枚で命令解釈・実行を行います。基板はどれも37 cm×35 cmあります。その上にTTL ICが並べられ、配線されていますが、今のように多層基板で0.2 mmくらいのパターンで配線されているのでなく、両面スルーホールですがパターン幅が1 mm近くあるため、ICが取り付けられていない余白部分もパターンでびっしりと覆われています。
HITAC-10II CPU board 1
HITAC-10II CPU board 2
以上のように、約230個のICでCPUが構成されています。この中にはメモリや入出力インタフェース回路やコンソールパネル制御回路が含まれていません。後にLSI 1個で実現されるCPUがこのサイズです。

さて、これが算術論理演算を実行するICです。1枚目の写真の右側中央部の拡大。
HITAC-10II ALU circuit zoom
SN74181が使われています。このICは4 bit同士の演算を行いますので、4個組み合わせて16 bitの演算を行っているのが、最初の写真から読み取れるでしょう。基板のパターン作成が手作業のため、微妙な曲線が使われているばかりか、太さも少しずつ場所によって違うのがわかりますか。現代のコンピュータを始めとする電気製品の基板はほとんどコンピュータによる作図を利用しているので、ずっとつまらない機械的なパターンばかりになっています。

2018年になって日立グループの情報誌である「日立評論」誌が創刊100年になったということで、バックナンバーの記事をpdf化して公開してくれました。で、検索に引っかかったのでHITAC-10とHITAC-10IIの記事のURLを貼り付けます。興味のある方はこれらを読んだり、日立評論のサイトのキーワード検索を利用して、色々と調べてみたら良いと思います。ということで、リンク:
---日立評論HITAC-10IIの記事: 基板写真もあるけど、外観写真も載っています。
---日立評論HITAC-10の記事: こちらがオリジナルの方ですね。