ByteShopカタログ

non object

ここではバイトショップソーゴーのカタログを紹介していきます。バイトショップソーゴーではS-100 Busシステム中心にコンピュータの輸入販売を行っていて、その中にはIMSAI 8080のような有名な機種も含まれます。以下のカタログは1977年の夏ごろに入手したもので、A4サイズ18ページ構成となっています。送料込み400円の有料カタログです。当時のS-100 Busシステムや周辺機器の詳細や価格がわかります。

サムネールをクリックすると、150 dpi相当の、小さな文字まで読める画像が表示されます。ただ、250 KByte前後のサイズがあります。


 

表紙

front cover
5枚の上質紙を二つ折りにして綴じたカタログの表紙です。ですから内容は18ページ。

1 - 4ページ、POLY88システム

page 1, POLY88 - 1page 2, POLY88 - 2page 3, POLY88 - 3page 4, POLY88 - 4
小型のS-100 busシステムで、この幅の狭い筐体に5枚までの基板を挿入できて、それが足りなくなると複数の筐体を並べて接続基板でバックプレーンを接続し、拡張することができます。このPOLY88は最下位のシステムでもビデオターミナルインターフェースを備えています。つまり、コンポジットビデオ入力を持つ家庭用TV受像機に64文字×16行の文字表示が可能で、ほかに出力機器を必要としません。しかも浮動小数点演算可能な11K BASICも付属しています。残念ながら、最下位システムではメモリが不足していてBASICを動かせませんが、それよりも上位のシステムを使うか、別にメモリボードを追加購入すれば、ただちにBASICを利用可能です。
そのためか、4ページのカタログのうち、最初の2ページは付属のBASICに関する説明となっています。ただ、当時はBASIC自身の知名度が低かったので、内容がこんなものですけど。
3ページ目と4ページ目は個々のコンポーネントの説明です。
POLY88はターンキーシステムで、電源スイッチを入れるだけでキーボードからのコマンドを受け付けTVモニタに応答を返すことができるように考えられていますから、CPUボード上にモニタプログラムを格納したROMを指すためのROMソケットとモニタプログラムの作業用の512 ByteのRWMが実装されています。モニタプログラム自体は4ページ目の右上にファームウェアモニターとして触れられていますね。ほかにカセットテープインターフェースなどに応用可能なシリアルインターフェースなんかも搭載しています。カタログ中の記事には、IMSAI/ALTAIRバスという言葉が出ていますね。S-100 busという言葉が一般的になる前に使われていた用語です。
ビデオターミナルインターフェースはTVモニタに64文字×16行の白黒表示を行うためのもので、キャラクタジェネレータを含むメモリ以外はLSIは使用されていないようです。ストローブ付きパラレル出力のキーボードを接続するためのインターフェースも同じ基板に載っています。
Byte/Poly PhaseカセットインターフェースはCPU基板のシリアルインターフェースの先に接続するためのインターフェースのようで、300, 600, 1200, 2400 bpsの速度での記録が可能となっています。おそらく300 bpsでByte誌なんかで公開されたカンザスシティインターフェースと互換性があるのでしょう。
Printer InterfaceというのもカセットインターフェースのかわりにCPU基板のシリアルインターフェースの先に接続するアダプタで、要は当時のRS-232に適合させるためのレベル変換を行うためのもののようです。当時はプリンタ用のインターフェースといっても特に何があるわけでもなく、これについてはRS-232インターフェースを持つプリンタに限ってのインターフェースなのでしょう。パラレルインターフェースではありません。
ソフトウェアには特に触れません。
4ページ目の右下にシステム構成について書かれています。SYSTEM/2とSYSTEM/6がキットで、SYSTEM/12とSYSTEM/16が完成品という関係になっています。SYSTEM/2だけでは、メモリが足らずにBASICが動きませんし、キーボードは別に入手する必要があります。SYSTEM/6ならコンポジット入力のTVモニタを手配すればBASICが使える構成ですが、68万円ほどですね。SYSTEM/16はSYSTEM/6の完成品にモニタとカセットレコーダまで付属したフルセットといえるものですが、100万円弱のお値段となっています。フルセットといっても、この構成ではBASICでコーディングしたプログラムや変数に使用できるメモリが5 KByte程度と思われるので、ちょっと本格的なプログラミングをBASICで行うには、さらにメモリを拡張する必要があります。当時のメモリボードは4 KByteでも6万円を越えていたので、なかなかたいへんですけれど。

5 - 8ページ、IMSAI 8080システム


有名なIMSAI 8080システムにも4ページかけて説明されています。最初の見開きで基本システムの構成について説明し、3ページ目でフロントパネルの機能について、4ページ目の左で各種オプション基板について、右ではソフトウェアについて、記述しています。
IMSAI 8080はMITS社のALTAIR 8800とほぼ同じものに少し高級感を持たせて似た価格帯で提供したものだと考えられます。フロントパネルのスイッチなんかにも良いものを使っていますし、マザーボードや電源もALTAIRより大きくなっています。
基本システムを簡単に要素に分けると、S-100 bus対応基板を動かすための入れ物と、マイクロプロセッサボードと、ソフトウェアやドキュメント類ということになります。しかし、この基本システムだけではコンピュータとして使用できません。メモリやI/Oポートが含まれていないからです。写真には多数のカードが挿入されていますが、実際にはマイクロプロセッサボード1枚が挿入されただけのセットです。デバッガやモニタソフトウェアが含まれているといっても、紙テープによる供給で、紙テープリーダを含む何らかの端末がなければ、意味を持ちません。しかも実用上は8 KByteのRAMがなければ動作しないソフトウェアだそうですから、それなりにメモリを増設しないとなりません。
1ページ目にサインペンで塗りつぶされた場所があります。ここには「KIT価格 \299,000」と印刷してあります。後に示す価格表では、338,000円となっていますから、価格改定か為替相場の影響があったのでしょう。4ページ目のオプション基板類の価格も価格表に記載されている値と異なっています。IMSAI 8080の基本システムキットは、この時期、アメリカでは$599で販売されていたようです。あ、今の感覚で考えてはいけません。この頃の為替相場では$1あたり\300弱というあたりでしたが、個人輸入の障壁も今より高く、サポートコストとか販売の手間もかかる時代でしたから、このくらいのレートで販売されるのが普通でした。洋書なんかも為替レートの2倍くらいの率で値段が決められていましたし。
IMSAI 8080システムはキットと完成品と2通りの形態で販売されていましたが、この記述ですとキットの販売のようです。2ページ目の右上の記述には、「10 - 20時間の作業でこの高度なコンピュータを手にすることができるでしょう」と、あります。また、2ページ目の左下のドキュメントのIMSAI 8080 SYSTEMユーザースマニュアルの項の冒頭には、「IMSAI 8080各部分に付いての、機能の説明、動作原理、組立て方法、使い方が詳しく述べられています」とも書かれています。キットで購入した場合、基板への部品のハンダ付け作業を含む組み立て作業が必要とされます。
ドキュメントにはINTEL 8080 Microprocessor Systemユーザースマニュアルも含まれています。IMSAI 8080は、いわばOSなどのソフトウェアを着せられていない裸のコンピュータで、付属のソフトウェアも機械語レベルで操作するためのモニタが中心なので、マイクロプロセッサの仕様とか回路の細部まで理解しないと、使いこなすのは困難でしょう。たとえばメモリを増設するのだって、買ってきた基板を挿入すれば作業完了というわけにはいかず、64 KByteのメモリ空間のどのアドレス領域に追加するのか、他のメモリボードの占有領域との関係をもとに計画し、メモリ基板の設定を正しく行わないと、まともに利用することはできません。入出力ポートの増設なんかもそうです。特にS-100 busシステムの良いところは、多数のメーカが競ってさまざまなカードを製造しているため、機能やコストに応じて多様なカードの中から自由に選択できるところにあります。逆にいえば、複数のメーカの入出力基板なんかを組み合わせる場合、添付の、あるいは別売のソフトウェアに機械語レベルでパッチを当てるようなことも生じるかもしれません。紙テープベースのBASIC言語システムとして利用する場合なんかは特に。なにせ、デバイスドライバによって入出力の細部を隠蔽できるOSなんかはありませんから。
3ページ目はフロントパネルの機能解説で、ほぼAltair 8800互換となっていることがわかります。このカタログはカラー印刷ではないのが残念ですが、スイッチ類などはきれいに色分けされています。
4ページ目の左側はオプション基板類が書かれています。
4 Kランダムアクセスメモリは1 Kbitスタティックメモリを用いたメモリボードで、価格表によると62000円です。16 KByteのメモリボードは4 Kbitダイナミックメモリを採用したものではないかと思われます。65 KByteのメモリボードは、当時最新の16 Kbitダイナミックメモリを使用したものと思われ、価格表によると1169000円と、なかなかすばらしい値段が付けられています。
リードオンリーメモリボードはp-MOSメモリの1702を用いたもので、比較的容量が少ないものだけしか掲載されていません。時代的には8 Kbitの2708も利用可能だったはずなのですが、あまりROMには力を入れていなかったのでしょうか。
I/Oインターフェースがどのようなものか、4ページ目右下のマルチプルI/Oポート(MIO)の写真が参考になります。この写真をよく見ると、中央上部の40ピンのICが汎用UARTのTMS6011、その右側に4個並んだ24ピンのICは8212であることがわかります。MIOの説明中にシリアルI/OポートはSIO2-1と同等でパラレルI/OポートはPIO4-2と同等という記述がありますから、他のI/Oインターフェースに使われているICも想像が付きます。
そういうわけで、シリアルI/Oインターフェースは8251でなく汎用のUARTを用いているようですね。モード設定などをプログラムする必要はなく、ジャンパーで各種設定を行えます。RS-232インターフェースだけでなく、カレントループインターフェースにも対応しているのが時代を感じさせます。ASR-33など、カレントループインターフェースを持つ端末機器も多かったですから。
パラレルI/Oインターフェースも8212を使用したハンドシェーク付き単方向入出力が用意されているだけのもののようです。
プライオリティーインターラプト/インターバルクロックボードは、S-100 busに用意されているVI0 - VI7の信号を処理するための基板で、ついでに周期的割り込みを発生するためのものです。Altairと同じく、プロセッサボードでは単に8080AのINTラインをバスに引き出しているだけなのでしょうね。
汎用プロトタイプボードは、回路を自作するためのユニバーサル基板です。
4ページ目の右側にはソフトウェアについて記述があります。ここのBASICインタープリターはMicrosoft社製なのでしょうかね。BASIC-8Aの説明中に「IF……THENの後にどのようなステートメントを続けてもよい」などと当時の状況を想像させる記述もありますね。THEN節に行番号ないしGOTO文しか書けないBASICというのも多かったですから。基本的には紙テープで供給ということですが、一部にカセットテープやディスケットで供給されているものもあります。

9 - 11ページ、XITANシステム


Technical Design Labs社のXITANシステムはZ80 CPUを採用したS-100 busシステムです。まだZ80 CPUが発表されてから1年程度ですから、かなり早い時期のZ80 CPUボードが含まれたシステムだといえるでしょう。S-100 bus自体が8080のハードウエアに依存したシステムのため、ステータス情報がバスのストローブ信号に先立って出力されないなどの差異が存在するZ80 CPUでS-100 bus互換にするのは困難でした。このような早い時期に製造されたS-100 bus Z80 CPUボードの互換性がどの程度か、興味があります。
XITANシステムは外見からわかるようにモニタROMを備えたシステムです。そのためコンソールパネルは省略され、カードスロットも8枚分しかなく、それに応じて電源も小規模になっています。写真から考えると、底面が30 cm角くらいで高さ17 cmくらいでしょうか。
XITAN alpha 1システムがモニタプログラムを動かすための最小構成で、XITAN alpha 2システムはそれに16 KByteメモリボードとBASICなどのソフトウェアを追加したシステムと考えられます。alpha 2に端末を接続すればBASICシステムとして利用できるわけですね。
2ページ目はXITANに使用されている個別基板について記述があります。それぞれ単独でも販売されていたようです。これは、セット販売はもちろんですが、別のS-100 busシステムの筐体を使用してZ80 CPUシステムを組むといった場合もあるからです。
ZPUボードはZ80 CPUを用いたCPUモジュールで、2 MHzクロックと4 MHzまでの任意の周波数のクロックを選択できるようになっています。CPU自体は2.5 MHzバージョンのようですから、ある意味、元祖オーバークロック対応CPUボードといえそうですね。前述のようにZ80 CPUとS-100 busの相性はよくありませんでしたから、1979年頃に製品化されたS-100 bus Z80 CPUボードにもメモリやI/Oボードとの互換性問題が存在しました。たとえば先に示したステータス情報以外にも、8080では入出力命令時にI/Oポートアドレスがアドレスバスの上下8 bitに同じように出力されていたのがZ80 CPUではそうではなくなったとか、いろいろと異なる点がありました。しかも古いI/Oボードには、同じ値が得られるならどちらから引っ張ってもかまわないだろうと、配線の楽な方からI/Oポートアドレスを取り出してデコードする製品があったりしました。したがって、Z80 CPUボードではI/Oポートアドレスを上位アドレスにも出力する回路が必要だったり、さまざまな対応策が必要とされます。私の持っているCromemco社のZPUボードにはパワーオンジャンプ回路とか別のものも付加されているとはいえ、40個のTTL ICが使用されています。それと比べるとシンプルな回路ですね。はたしてどの程度の互換性があったのでしょうか。
メモリボードのZ16Kは当時としては大容量のメモリボードだと考えられます。通常は2102を用いた4 KByteから8 KByte程度のボードが多かったはずです。Z80 CPUで大容量メモリボードというと、ダイナミックメモリの採用が考えられますが、Z80 CPUのリフレッシュタイミング信号などはS-100 busには定義されていません。Z16Kはスタティックメモリを採用しています。最初の印象では、この時期に4 KbitメモリLSIを採用しているということと写真から22 pinのメモリ素子であるということ、さらにアクセスタイムが200 nsという説明から、2107タイプのダイナミックメモリ素子を採用しているのかと思いました。しかしEMM SEMI社の4200というのは調べてみるとn MOS clocked SRAMでした。使い勝手は2107タイプとほぼ同じで、3電源でCE*端子はMOSレベルの高電圧で駆動しなければいけないとか、サイクルタイムとアクセスタイムが異なるとか、普通のスタティックメモリとはかなり違う雰囲気のメモリ素子ですが、その分、一般的なスタティックメモリが450 ns程度のアクセスタイムであったのに比べて高速であるなど、有利な点もあります。しかし、セカンドソースが存在しないようです。価格的には2102なんかを用いて複数枚のメモリカードで16 KByte用意するのと、ほぼ同程度か少し高い程度に納まっています。
SYSTEM MONITOR BOARDはモニタROMとその動作に必要なI/O周りを集積した基板で、ZPUボードと対で最低限のモニタプログラムの動作が可能となっています。RAM素子はEMM SEMI社の4804で、2114と性能的には同じメモリ素子ですが、ピン配置が異なる独自仕様のものです。1200 bpsのカセットインターフェースも搭載しています。比較的高速なインターフェースですね。
2ページ目の右下から3ページ目にかけて、ソフトウェアの説明が記載されています。
モニタプログラムは紙テープベースを想定して設計されているようです。リロケータブルであることが強調されていますが、MC6809ではあるまいしROMを任意のアドレス空間にそのまま配置可能という意味ではなく、リロケータブル形式のオブジェクトが供給されて、このモニタのRコマンドで任意のアドレスに再配置可能という意味ですね。2 KByteとかなり小さなサイズですから、逆アセンブルといった高機能なコマンドはありません。紙テープからのロードやメモリイメージのパンチ、メモリやレジスタの表示や変更などが主な機能です。
テキストエディタも紙テープベースのエディタで、紙テープからテキストを読み込みながら編集を行い、結果をテープにパンチするタイプのものです。画面の任意の場所を書き換えて再表示できるビデオスクリーン端末が備わっているシステムは珍しかったですから、スクリーンエディタのようなものは考えられませんでした。MS-DOSのEDLINに紙テープ操作コマンドが追加されたようなエディタです。
アセンブラは比較的高機能のマクロ機能を備えています。Z80 CPUを想定したシステム用のアセンブラですから、Z80 CPU固有の命令もアセンブル可能ですが、ニーモニックの仕様については時代を感じてしまいます。Intel 8080命令の部分はIntel式のニーモニックで、Z80 CPU固有部分についてもZilogニーモニックではなく、部分的にIntelの8080ニーモニック類似の独自ニーモニックを使用しています。Z80 CPUが一般的ではなく、ほとんどのプログラマが8080ニーモニックに慣れ親しんでいるという時代だからこそ、このような仕様になっているのでしょう。別のシステムで動作しているソースコードをXITANシステムに移植して利用する場合にも、Intelニーモニックで書かれたプログラムばかりでしょうし、その意味では合理的だと考えられます。Z80 CPUが広く使われるようになると、8080や8085のためのプログラムでもZilogニーモニックで開発するプログラマが多くなるのですが、当時としてはZ80 CPUは普及するかどうかわからない新しいプロセッサですからね。
BASICは8 KBASICとしては標準的なものだと思われます。

12ページ、各種S-100ボード


このページでは、いくつかの拡張ボードが紹介されています。
まずは後にZ80 CPU中心のシステムを扱って有名になったCromemco社のA/D, D/A変換ボードです。アナログ入出力ボードという方が通りが良いでしょうか。8 bit精度のA/DコンバータとD/Aコンバータをそれぞれ1個搭載して、アナログマルチプレクサを用いて7チャネルに見せかけています。単純なD/Aコンバータとマルチプレクサではアナログ電圧を保持できませんので、マルチプレクサの先にコンデンサを接続してサンプルアンドホールド回路を形成して、1回の出力でしばらくは指定されたアナログ電圧値を保持している構成です。汎用に使える8 bit I/Oポートも用意されていますね。
A/D変換時間は5.5 usで、なかなか中途半端な速度です。というのも、このボードが使用されるシステムでは1命令実行時間が3 us前後と考えられ、プログラムによるフラグ監視ループや割り込みで処理するには無駄が多い短時間だけれども、複数の入力命令で連続して変換データを読み出そうとしても間に合わないで誤った変換中の値を読み出しかねない時間です。これを解決するのに、入力命令前にダミー命令を1, 2命令挿入して時間待ちを行うといった手法もありだと思いますが、この基板ではREADY信号を操作してWAITサイクルを挿入し、入力命令の読み込み時間を5.5 usに引き伸ばしています。複数の入力命令が連続して実行されようと、基板上のハードウエアによって時間待ちが挿入されて、必ず正しい変換後の値が読み込めるようになっています。これはこれで、プログラムの命令を節約することもできるなど利点もあります。ただDMA応答時間に影響が出そうだとか、ちょっと心配なところもありますけどね。
このカタログとは別の話になりますが、S-100 busシステムは安価な計測制御用コンピュータとして使われることも多く、そのためにもう少し高級なアナログ入出力や絶縁デジタル入出力などの機能を持つ基板を提供するメーカーもありました。日本国内では、早い時期からS-100 busシステムを出していた株式会社マックエイトとか、今でもPCIバスや工業用組み込み用バスシステムに対応したさまざまなインターフェース基板を製造している株式会社インターフェースなんかも、当時はS-100 bus基板を製造販売していました。
このD+7AI/Oはアマチュアレベルの実験に使うには良いでしょうけど。
右側の、やはりCromemco社のBYTESAVERはROMライター付きのROMボードです。RWM上のデータをPROMに書き込んだり、PROMからRWMにデータを転送するプログラムも付随しています。ある意味、現在のATA Flushメモリカードのように、補助記憶的に使用することを想定されたボードのようです。
ユニバーサルボードは回路自作用の基板ですね。ラッピング用というのは基板パターンのことを意味していて、ラッピングピンが最初から挿入されているわけではないようです。
右下の、説明も何もないSPEECHLABは当時としては画期的な音声認識用のボード(とソフトウェア)です。特定話者の、あらかじめ学習した十数単語しか認識できませんが、音声認識は音声認識です。
原理は、マイク入力を増幅したあと、その音声のエンベロープ(強弱の時間変化)と、さらに複数のバンドパスフィルタ回路を基板上に備えていて、複数の周波数帯域のエンベロープも合わせて比較するというものです。ある意味、かなり簡略された声紋分析ハードウエアといえないこともありません。そうして、学習時には認識させたい単語の声紋をメモリ上に貯え、認識時には入力した単語の声紋がメモリ上に貯えた複数の声紋の中でどれに一番近いかを比較して判定します。
現在なら、バンドパスフィルタに相当する部分もデジタルシグナルプロセッサで高速フーリエ変換を実行して細かく分析可能ですが、当時のCPU能力ではとてもそこまで実用的な時間内に計算できませんから、アナログ回路で補助しているわけです。おもちゃレベルの音声認識ですが、それでも結構なお値段が付いていますね。そういえば、これだけは価格の前にKIT価格ではなくて完成品と記してあります。

13ページ、EQUINOX 100システム

シンプルで高級感のある外観のEQUINOX 100システムです。コンピュータが事務処理に使えるようになってくると、オフィスに置いても違和感がない程度の外観が求められたということでしょうか。IMSAI 8080とか、コンピュータルームとかアマチュアの部屋に置くならよいのでしょうが、オフィスだとちょっと目につきすぎる筐体ですから。値段がはりますがCRT端末にもADM-3のようなスマートな外観を持つものがあって、こういう静かでスマートな端末と組み合わせれば、オフィスでBASICで書いた事務処理プログラムを利用するには他のシステムよりふさわしいでしょう。キットですが、ハンダ付け部分は組み立て済みで、ドライバ程度の工具で組み上がるようになっています。
もう一つの特徴はフロントパネルで、スナップスイッチが並んでいるわけでも、電源スイッチしかないといったものでもなく、12個のプッシュスイッチと10個の7セグメントLEDが並んでいます。このプッシュスイッチを使ってメモリの読み書きなどを行えます。しかし12個のスイッチとは少なく感じますね。このEQUINOX 100では16進数ではなくて8進数で入力や表示を行います。ですから、数字キーは0から7までの8個で、残りの4個がコマンドキーの役割を果たします。
このコンソールパネルの制御ですが、ハードウエアだけで行っているのではなく、CPUボードに配置されたモニタプログラムによってコントロールされているものと思われます。というのは、仕様のところにuser program address spaceとして65024 Byteとあるからです。16 bitアドレス空間の65536 Byteから512 Byte少なくなっています。おそらく、その512 Byteがモニタプログラムと作業用メモリに使用されているのではないかと思われます。
価格には通常版とエコノミィというのがありますが、この違いは何かわかりません。価格表にはエコノミィに関する記載はありませんでした。

14ページ、BYT-8システム


BYTE社のBYT-8は、安価なS-100 busのケースです。BYT-8自体にはCPUボードは含まれていませんが、それでも電源やマザーボードを入れて10万円を切る価格となっています。中段のCPUボードであるBYTE MPUを入れても15万円を切りますから。これにRWM, ROM, I/O基板を追加すれば、ターンキーシステムのできあがりです。フロントパネルを下段のBYTE CONTROL PANELに入れ換えれば23万円以下でIMSAI 8080よりも10万円ほど安く似たような小規模な基本システムが得られます。
このカタログに掲載されているS-100 busシステムは、このBYT-8が最後ですが、電源を眺めると、5 V電源に使用される+8 V非安定化電源の容量は、平均してスロットひとつあたり1 A程度が想定されているようです。まぁ、スロットがすべて占有されて使われる状況は少ないでしょうが、フル実装ではTTL ICが大量に搭載され大食いのn-MOSメモリが使われがちな当時の状況では、ちょっと不足気味のようにも思われます。巨大に思えるIMSAIクラスでも2次側の総電力が250 W程度ですから、今の感覚では意外なほど小さく思えるかもしれません。とはいえ、消費電力が大きいといってもロジック規模に比べてで1パッケージで2 W消費するようなICはありませんし、ディスク類は内蔵していませんから、こんなものかもしれません。
BYTE MPUは普通のCPUボードですが、割り込み制御回路付きというのは珍しいかもしれません。ただし、写真や右側のブロック図をよく見ると、割り込み制御回路に使用される8214や8212はオプションになっていて、空きソケットしか実装されていないようです。それとブロック図の中央の8212はあきらかにステータスラッチに使われているのに、データバスバッファと結合されていたりして、おかしな点がありますね。
BYTE CONTROL PANELはBYT-8の専用オプションのフロントパネルで、標準的な機能を備えています。ハードウエアのテストやイニシャルプログラムローダの書き込みには充分使えるでしょう。フロントパネルがBYT-8のシャーシサイズであったり、カードサイズが通常のS-100 busカードより4インチも大きくて、写真に写っている基板左側、スイッチの実装されている側が異様に長いことから、専用オプションであることがわかります。

15, 16ページSWTPC6800システム


SWTPC6800システムはSOUTHWEST TECHNICAL PRODUCTS CORPORATION、略してSWTPC社のMC6800を中心にしたコンピュータシステムで、S-100 busシステムではない独自のバスとアーキテクチャを持っています。筐体の外観は真空管式アンプを連想させるような雰囲気があります。
まず、カードエッジコネクタを用いるS-100 busと異なり、ツーピースコネクタを用いているところが目を引きます。しかも、CPUやメモリを接続する幅の広いバスと、I/O専用のバスが別々に用意されています。
少なくともIEEE規格が成立する前の初期のS-100 busは8080アーキテクチャに強く依存していて、Z80 CPUを搭載するのだって苦労する代物ですから、かなり性質の異なるMC6800を中心に据えたS-100 busシステムというのは実現困難だと思われます。というわけで、最初からMC6800向きのバスシステムを開発して販売したのがSWTPC社というわけですね。I/Oボードは小さなアドレス空間しか占有しないし、ひとつのボードにひとつの機能しか載せないことにすれば、ボードサイズも小さくできてコストダウンできます。そのため、2ページ目のMP-C, MP-S, MP-L, MP-TなどのI/Oボードの価格をみると、比較的安価であることがわかります。ただ、独自システムですので、多数のメーカがしのぎをけずったS-100 busの拡張ボードのように、多種類の製品の中から選択する余地というのは、ほとんどありませんけど。
CT-64ターミナルキットはシリアル接続するCRT端末のキットで、おそらくCRTモニターを含まないセットだと思われます。32行×16行モードなら、家庭用TV受像機をCRTモニターのかわりに使用することもできるでしょう。
本体、周辺機器、ソフトウェアは、当時としては意外に安価な方です。

17, 18ページ、周辺機器類


周辺機器や書籍の掲載されているページです。
1ページ目はCRT端末2台についてで、SDT-380Zはバイトショップソーゴー独自のキット製品、ADM-3は完成品の比較的有名なCRT端末です。
SDT-380ZはASR-33のかわりに使える64文字×16行のCRT端末で、かなり限定された制御コードを受け付けます。SIやSOが使われているところをみると7 bit系のコードを使うようで、ジャンパーにもデータビットの切り替えがないところをみると8 bit系の文字符号は使えないようです。というか、カナ文字はオプションとなっていますね。
気になるのは基板写真で、40ピンのLSIと28ピンのLSIが見える以外は16ピン程度のICばかりです。40ピンのLSIはUARTで28ピンのはキャラクタジェネレータと思われますので、マイクロプロセッサは使用されていないということになります。マイクロプロセッサが使われていれば、さらに40ピンのプロセッサや24ピン程度のROMが載っていそうですから。したがって、UARTからリフレッシュメモリへの文字コードの書き込みや制御コードの処理やスクロールの処理は、すべてランダムロジックで実装しています。まだマイクロプロセッサがなかったり、あっても高価で珍しい時期は、端末はみなTTL ICなどを使ってランダムロジックで製作されていました。マイクロプロセッサが利用できれば、このSDT-380でももう少しICの個数を減らして機能を加えることもできるのでしょうけど。同時期のものだと、LKIT-16のCRT表示インターフェースも(シリアル入力でなくサブチャネルバス経由ですけど)同じようにランダムロジックで文字表示やスクロール処理を行っていました。これも、そのようなランダムロジック回路が広く使われていた時代の製品だということでしょう。写真からはキーボードが付いているようですが、これについては価格表のところで。この頃はキーボード単体でも数万円の値段がついていました。
ADM-3はLEAR SIEGLEA社のCRT端末で、KIT価格とありますが完成品のはずです。価格も50万円と高価で、プロ仕様の80桁表示が可能となっています。パンチカードを始めとして、FORTRANの言語仕様も80桁の入力が前提になっていたりしましたから。ただし、標準で12行の表示というとかなり少ないですね。リフレッシュ用のメモリを1 KByte以内に収めたかったのでしょう。また、表示文字種類も64 ASCIIとなっていて、小文字は使えないものと思います。どちらもオプションで24行表示にしたり、小文字表示を可能にしたりできたようですが。CRT端末といっても細かなカーソル制御などが可能なわけでなく、あくまでTTY端末の置き換えが目的です。TTYでスクロールしていく紙の手元の限られた行数分だけ表示されるというイメージで。
当時のソフトウェアはTTY端末を想定しているのが普通でしたから、スクリーンエディタなんてものはS-100 busシステムではまず考えられませんでした。まぁ、8 KByteとか16 KByteがメモリのすべてというシステムが多かったのですから、あまり高度なプログラムも動かせませんし。その点、この頃から広まったオールインワンのコンピュータのように16 KByteとか32 KByteのROMを持ち、さらに16 KByte以上のRWMを内蔵して、リフレッシュメモリもメモリ空間のなかにあってCPUからランダムアクセスできるようなシステムのほうが、高度な対話機能やスクリーンエディタの実装には有利でしょう。S-100 busシステムも大容量メモリを実装しフロッピーディスクを備えてADM-3より高機能のCRT端末を備えるようになれば、話は違いますが、まだこの時代では相当に高価なシステムになったでしょう。
2ページ目の左上には紙テープの巻き取り機があります。紙テープパンチャやリーダから吐き出されたテープを巻きなおして整理するための道具です。パンチャなどから出てきた紙テープは、最後に出力した部分が巻きの中心にあって最初に出力した部分が外側にくるように巻き直さなくては次に読み取らせるときに困りますから、このような機械がありました。
プリンタはボールペン式のちょっと変わったもののようですね。

別添、価格表

カタログに同封されてきた価格表です。右上に有効期限が1977年10月頭とあります。当時はすでに変動相場制になっていましたし、半導体の価格変動の影響もありますから、刷り直しにコストのかかるカタログ記載の価格よりこちらの価格表の方が優先されます。
詳細に検討してみると、カタログでは単体での価格が表示されていないボード類の価格が表示されていたり、カタログにまったく記載のないボード類も存在するのがわかります。逆にカタログに記載されているのに価格表に掲載されていないものもありますが、入手できないから掲載されなかったのか、問い合わせればただちに価格を知らせてもらえたのかまでは、わかりません。
POLYMORPHIC SYSTEMSのPOLY88は小型のシステムですが、それでもBASICの動くフルシステムで972000円します。ディスクドライブを含まずカセットテープベースのシステムで16 KByteのメモリで、です。これを考えると、MZ-80KとかPC-8001とかの初期の国産オールインワンシステムがいかに安価なものであったか、よくわかります。電源付きのケースだけで10万円を越えてしまっているわけで、最近のPCのケースの価格なんかを考えると、量産の効果というのはすさまじいものだと思います。逆に11 K BASICとかGAMEプログラムの価格は意外と安く感じます。CAS CARDというのはカセットテープインターフェースのことでしょう。
SOGOHはバイトショップソゴーのオリジナル製品のところで、端末のSDT-380Zの完成品は248000円で、メインボードのキットの価格が98000円となっていますね。カタログの98000円というのはキーボードなど含まない価格だったようです。キーボード単体で59000円とありますが、最近のキーボードの価格と比べると目を疑ってしまいそうです。ただ、当時のキーボードに使われていたスイッチは一つ一つ独立した個別スイッチでかなり高級な部類の部品を使用していたりして、あまり安いものはありませんでした。
NORTHSTAR COMPUTERはカタログにはありませんが、おそらく外付けケースに収められた5.25インチフロッピーディスクドライブだと思います。インターフェースカードは含まれるかどうか、ちょっとわかりません。
MICROPOLISもドライブ関係だと思いますが、ちょっと何かわかりません。
IMSAIは、基本システムで338000円とありますね。65 K RAMが1169000円というのは、別世界のような価格ですけど、当時ではまだ珍しかった16 Kbitダイナミックメモリを採用したカードだったのでしょうか。まぁ、IMSAI 8080なら空きスロットがたくさんありますから、16 K RAMや32 K RAMを複数枚使えば良いのでしょうけど。というか、どのくらい需要があるのでしょうかね。65 K RAMは。IMSAIのBASIC 9K CASSETTEは40000円という価格で、ある意味、当時のソフトウェアの価格としては納得できそうな値段になっています。DOS-AというフロッピーディスクベースのOSらしきものが40000円という価格で販売されています。
MAXISWITCHは単体キーボードだけですね。
TECHNICAL DESIGN LABSで気になるのは4 K EXPANSIONと書かれている追加分のメモリの値段ですね。63000円もします。4 Kbitメモリ8個の値段のはずですから、メモリICひとつで8000円近くするわけです。ただ、アクセスタイム200 nsの4 Kbitスタティックメモリは最新のメモリチップですから、それほど無茶な価格ではありません。カタログの記述からするとソフトウェアの機能は優れていそうですが、価格もIMSAI並みに高価ですね。
反面、S-100 busでないMC6800を採用したSWTPCはハードウエアもソフトウェアも安価です。なお、SWTPCのコンピュータでもFLEXといったディスクオペレーティングシステムを使うこともできたし、この数年後にはMC6809を用いたプロセッサカードも販売されて、OS-9なんかも使えたと記憶しています。
EQUINOX 100やBYT-8は特にコメントすることもありません。
LEAR SEAGLER社のADM-3のところにはオプションの価格も掲載されています。英小文字を使えるようにするオプションが35400円で、数値入力用のテンキーが60000円ですか。
CROMEMCO社のところにはカタログに掲載されていないものがいろいろあります。TV DAZZLERはCROMEMCO社の最初の製品で、初期のグラフィックス表示コントローラボードです。TVにカラーグラフィック表示を行えます。ZPU BOARDは私のコレクションにも含まれるZ80 CPUボードです。TU ARTはTMS5501を2個搭載した、パラレル・シリアルインターフェースカードです。
FRANKLINやSEALSは8 Kメモリボードです。SEALSのものは、私のコレクションにあるROBIN/ESDラボラトリのメモリボードにそっくりで、もしかするとROBIN/ESDの方がコピー商品かもしれません。
TARBELL ELECTRICのCASSETTE INTERFACEはカセットテープレコーダを2次記憶装置として使用するためのボードで、当時の標準的カセットインターフェースとして知られています。
DYNABYTEはカタログのほうに掲載されていない16 KByteメモリボードがありますが、詳細不明です。